論文読み: Camera Control in Computer Graphics (Computer Graphics Forum (2008))

コンピュータグラフィクスに関するカメラコントロールの研究に関するサーベイ論文を読んだので、備忘録的に概要だけメモしておこうと思います。

2008年の論文なのでそれなりに情報は古いですが、この分野の研究の全体像を掴むには非常に良い論文だったと思います。

読んだ論文について

読んだのは以下の論文です。

Marc Christie, Patrick Olivier, Jean-Marie Normand
Camera Control in Computer Graphics
Computer Graphics Forum (2008)

これはジャーナル論文ですが、ほとんど同じ研究グループから Eurographics'06 の STARs (State-of-the-Art Reports) に似た論文が投稿されたり、SIGGRAPH の Course で同じ内容の講義が行われたりしているようです。

概要

カメラコントロールは、映像表現において観る人の経験を大きく決めるため、非常に重要です。コンピュータグラフィクスの文脈では、実写におけるカメラコントロールのノウハウを如何に実現するか、というのが主な研究対象のようです。

カメラコントロールのノウハウとは、例えば被写体が物陰に隠れないように撮影するだとか、被写体が複雑に動くときにカメラをどのように動かすかだとか、そういったことを想定しています。(被写体の semantics を考えたり、より高度なノウハウの話になると、人工知能といった研究と関連が深くなってくる気がします。)

コンピュータグラフィクスにおけるカメラワークは、映画などを製作する際にはまだ話は単純です(なぜならアーティストがいくらでも手で修正を加えることができるからです)が、ゲームなどのインタラクティブなアプリケーションにおいては、別段厄介です。例えば、カメラの動きとして有効な動きをリアルタイムで探索・決定する必要があったり、被写体やカメラの動きを予測し、近い未来に被写体が物陰に隠れないように考慮しなければならなかったりします。

サーベイの対象

カメラワークにはインタラクティブなアプローチ(ユーザがカメラをある程度コントロールし、残りを自動で計算する)とオートマティックなアプローチ(完全に自動でカメラワークを計算する)があり、この論文ではその両方についてサーベイしています。

課題と主なアプローチ

効果的なカメラワークの実現に際してチャレンジングな課題としては、主に

  • number of degrees of freedom (自由度が大きすぎて扱いが難しい)
  • computational complexity (計算量が増大しやすい)
  • path-planning problem (どのように動くべきかが難しい)
  • avoidance of occlusion (隠れてしまうのを避けるのが難しい)

などがキーワードとして挙がるようです(上記の4つは並列に表記すべきではないかもしれませんが)。

これらの課題を解決するために、様々な研究がされてきました。その主な分類としては

  • Low-level approaches
  • Constraint-based / optimization-based approaches

に分けられると考えることもできます。前者はロボティクスやセンサプランニングといった研究分野と関連があるかもしれません。後者はよりハイレベルな、インテリジェントなプランニングの研究に属すると言えます。

論文の構成

この論文ではまず
1. Introduction
で研究の文脈を紹介し、
2. Motivation
でこの研究分野の目標や背景について詳しく議論した後、
3. Camera Control in Cinematography
で実写におけるカメラワークのノウハウやカメラワークにおいて大事な要素について確認し、
4. Interactive Camera Control
4.1. Direct Control
4.2. Through-the-Lens Control
4.3. Assisted Control
5. Automated Camera Control
5.1. Reactive Approaches
5.2. Optimization-Based Approaches
5.3. Constraint-Based Approaches
5.4. Constrained Optimization Approaches
で今までなされてきた研究の内容を紹介し、
6. Conclusion
で論文全体をまとめています。