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論文読み: Cost-effective Printing of 3D Objects with Skin-Frame Structures (SIGGRAPH Asia '13)

はじめに

今回は、来月開催される Computer Graphics 分野のトップカンファレンス SIGGRAPH のアジア版、SIGGRAPH Asia で発表される論文を一つ紹介します。

Weiming Wang, Tuanfeng Y. Wang, Zhouwang Yang, Ligang Liu, Xin Tong, Weihua Tong, Jiansong Deng, Falai Chen, Xiuping Liu
Cost-effective Printing of 3D Objects with Skin-Frame Structures
SIGGRAPH Asia '13
プロジェクトページ

概要

扱う問題

三次元プリンタがかなり普及してきましたが、三次元プリントするには材料を購入する必要があり、それがそれなりに高額であるというのが問題点です。

目標

そこでこの論文では、三次元プリントする際の材料を最小化するように内部構造を最適化することで、できるだけ安くプリントすることを試みています。

アプローチ

内部を単に空洞にしたり、単純な格子構造などによって軽量化したりするだけでは強度の問題が起きてしまうため、この研究では skin-frame structure と呼ばれる構造を採用することで、できるだけ材料を減らしつつも強度を保つように工夫しています。

なお、skin-frame structure の内部構造は truss structure などと呼ばれることもあります。

frame structure の例, truss structure の例

研究グループ

Microsoft Research Asia (北京) による研究です。

学術的な貢献

1. 安く三次元プリントするための画期的なアプローチの提案

構造的な安定性、幾何学的な近似の精度、自立するかどうか、実際にプリント可能かどうか、などを考慮しながら、skin-frame structure を用いて、材料の量を自動で最小化する手法を提案しています。

2. L0 スパース最適化

L0 スパース最適化 (L0 sparsity optimization) を用いて余計な struts (frame structure におけるエッジにあたる部分) を省いていく操作 (つまりトポロジ最適化) を行っています。

3. 多目的計画法

最小化問題を多目的計画法 (multi-objective programming, MOP) として定式化し、preemptive algorithm を拡張した反復的な解法によって解いています。

TopOpt と GeoOpt の組み合わせ

論文内で TopOpt と呼ばれる部分は、トポロジ最適化のことを指しています。また、GeoOpt と呼ばれる部分は形状最適化のことを指しています。

前者に関しては L0 最適化を用いた手法を新たに提案し、struts の数を減らすようにします。

後者に関しては既存手法 [Nocedal and Wright 2006, Chapter 19] をそのまま用い、材料の量を減らすようにします。

両者を多目的計画法によって組み合わせて最適化します。

ちなみに両者のコスト関数を適切に重み付けして加算し、それを最小化するというアプローチが「あるある」な方法なのですが、重み付けのバランスを慎重に決める必要性があります。それを避けるために、この論文では敢えて多目的計画法によって定式化しているそうです。

関連研究

近年の SIGGRAPH では三次元プリントに関する研究が非常に多く発表されています。
今回の論文のようにプリントした物体の強度を考慮するものとしては以下のものがあります。

Ondrej Stava, Juraj Vanek, Bedrich Benes, Nathan Carr, Radomir Mech
Stress Relief: Improving Structural Strength of 3D Printable Objects
SIGGRAPH '12

この研究では各部位にかかる応力 (stress) を解析することで構造的に弱い部分を発見し、内部を空洞にしたり、補強材をつけたり、厚みを増したりすることで補強します。

今回紹介した研究とは違い、Stress Relief では材料の量に関する最適化は行っていないため、場合によっては材料費が増えてしまうということもあり得ます。

追記 (2013/10/17)

私見 (感想)

トポロジ最適化の部分で、struts の数を減らしていくという最適化問題を、ベクトルの L0 ノルムを最小化するという問題に置き換えて解いている点が非常に面白いと思います。

L0 最適化や L1 最適化というのは私は専門外でよく分かっていないのですが、グラフィクスの分野ではこの 1, 2 年で急速に目にするようになった流行りの単語です。

三次元プリントもグラフィクス分野での流行りですし、「流行りの問題を流行りの最適化で解いた」という結構「旬な論文」なのでは、という感想を持ちました。