論文読み: Simulation and Control of Skeleton-driven Soft Body Characters (SIGGRAPH Asia '13)
はじめに
SIGGRAPH Asia '13 が今日から開催されているということで、今回は SIGGRAPH Asia '13 の論文を適当に一つ眺めてみました(といっても導入部分まででですが)。以下、付け焼き刃の知識なので間違っている部分があるかもしれません。もしあれば是非教えて下さい。
Libin Liu, KangKang Yin, Bin Wang, Baining Guo
Simulation and Control of Skeleton-driven Soft Body Characters
SIGGRAPH Asia '13
著者 (KangKang Yin) のページ
何の研究か?
ゲームや映画などの CG でキャラクタを動かすのに使われるキャラクタアニメーションと呼ばれる技術に関する研究です。物理ベースのリアルな動きを表現できます。
前提知識
前提知識1:スケルトン(骨)のモーションを生成する研究
モーションコントローラと呼ばれるシステムによって、キャラクタのスケルトン(骨)の動きを生成するという研究が、かなり前から行われています。ゲームエンジン Unity の Mechanim などもモーションコントローラの一種と呼んで良いと思います。
参考(モーション生成)
Lucas Kovar, Michael Gleicher, Frédéric Pighin
Motion Graphs
SIGGRAPH '02
プロジェクトページ
特に、それぞれのボーンを剛体と見做した物理シミュレーションと統合することによって、物理ベースの、よりリアルなモーションを生成するという研究が存在します。これを物理ベースキャラクタアニメーションと呼んだりします。例えば、障害物とぶつかったときに、倒れまいと踏ん張ったりする、といったアニメーションを生成することができます。
参考(物理ベースモーション生成、よく見ると今回紹介する研究と同じ研究チームです)
Libin Liu, KangKang Yin, Michiel van de Panne, Baining Guo
Terrain Runner: Control, Parameterization, Composition, and Planning for Highly Dynamic Motions
SIGGRAPH Asia '12
プロジェクトページ
前提知識2:柔軟物体の動きを生成する研究
柔らかくて中身の詰まった物体(ゴムボール、脂肪、ゼリーなど)の動きを物理シミュレーションによって生成するという研究が存在します。これは弾性体シミュレーションと呼ばれ、エンジニアリングの分野では古くから研究されています。CG の分野でも研究が進んでおり、特にバネマスモデル、有限要素法 (FEM) を用いた連続体力学モデル、Shape Matching 法による幾何学モデルなどが有名です。
参考(有限要素法に基づくモデル、Warped Stiffness FEM)
M. Müller, J. Dorsey, L. McMillan, R. Jagnow, and B. Cutler
Stable Real-Time Deformations
SCA '02
前提知識3:肉揺れのあるキャラクタのアニメーションを生成する研究
上記の、スケルトンのモーションがあり、肉の弾性体的な揺れを同時に表現するような研究が、近年盛んに行われています。
単純なアプローチとしては、
- まずモーションコントローラによってスケルトンの動きを生成し、
- 続いて弾性体シミュレーションによって肉の揺れを計算する
といった方法が考えられます。実際に、現在の映画制作やゲーム制作にはこのような方法が主に用いられていると思います。
参考(スケルトンの動きから肉揺れを計算)
A. McAdams, Y. Zhu, A. Selle, M. Empey, R. Tamstorf, J. Teran and E. Sifakis
Efficient elasticity for character skinning with contact and collisions
SIGGRAPH '11
もう少し複雑なアプローチだと、肉揺れの影響がスケルトンのモーションにも影響する、といったことが考えられると思います。つまり、物理ベースキャラクタアニメーションと、弾性体シミュレーションが相互作用するということです。このアイデアが今回の研究の肝となっています。
この論文の新規性
では肉揺れの影響がスケルトンのモーションに影響するようなキャラクタアニメーション手法がなかったかというと、そういうわけではありませんでした。
それらの研究との違いとして、今回の論文で強調されていたのは、
- ジョイント周りの大変形(シミュレーションが不安定になりやすい)に対応するための塑性モデルの提案
- モーションコントローラを構築するためのサンプリングベースのアルゴリズムの提案
の2点です。これによって、既存手法の組み合わせだけではなし得なかったハイクオリティなアニメーションの生成に成功しているそうです。